はじめに:相場にも“波”がある
日々の鍛錬で「波」を意識するように、相場にもリズムがある。エリオット波動は、そのリズムを読み解くための理論だ。単なるテクニカル分析ではなく、投資家心理の集合的な動きが形となって現れる“波の哲学”とも言える。
エリオット波動の基本構造
ラルフ・ネルソン・エリオットが1930年代に提唱したこの理論は、相場が一定のサイクルを繰り返すという前提に基づいている。
🔹 推進波(Impulse Waves)
- 相場がトレンド方向に動く5つの波(1波〜5波)
- 1波:初動。まだ誰も気づいていない。
- 2波:反発。1波の大半を打ち消す。
- 3波:最も力強く、出来高も多い。多くの投資家が乗る。
- 4波:調整。複雑な動きで迷いが出る。
- 5波:最後の上昇。熱狂と過信が入り混じる。
🔸 修正波(Corrective Waves) - トレンドに逆らう3つの波(A波〜C波)
- A波:下落の始まり。まだ“調整”と捉えられる。
- B波:一時的な反発。希望が残る。
- C波:本格的な下落。トレンドの終焉。
エリオット波動の3原則
- 第3波は最も短くならない
- 第2波は第1波の始点を割り込まない
- 第4波は第1波の高値を割り込まない
この3原則を満たすことで、波の構造がエリオット波動として成立する。
フラクタル構造とフィボナッチ
エリオット波動は“フラクタル”構造を持ち、どの時間軸でも同じような波が繰り返される。また、波の長さや戻りの目安にはフィボナッチ比率(38.2%、50%、61.8%など)が使われることが多い。
実践的な視点:今どの波にいるのか?
エリオット波動の最大の価値は、「今、自分がどの波にいるのか」を把握することにある。推進3波なら強気で攻める。修正B波なら慎重に構える。波を読むことで、感情に流されずに判断できる。
🌀 体感として“第3波だけはわかる”瞬間
すべての波を見極めるのは難しい。だが、第3波だけは“わかる”時がある。勢いがあり、周囲の空気も変わり、身体や思考が自然と乗っていく感覚——それは鍛錬でも相場でも共通している。
- 相場なら:価格が力強く伸び、出来高が増え、周囲の反応も加速する。
- 鍛錬なら:呼吸と動きが噛み合い、集中が高まり、身体が“勝手に動く”ような感覚。
- 思考なら:言葉がスルスルと出てきて、記録や表現が止まらなくなる。
この“第3波の体感”を掴めるようになると、波の中で自分がどこにいるかを直感的に判断できるようになる。
おわりに:鍛錬者としての“波”の感覚
鍛錬でも相場でも、波を読む力が本質を見抜く力につながる。数字の裏にある心理、動きの中にあるリズム。それを感じ取る感覚は、日々の記録と内省で磨かれていく。


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